強行採決後、6月2日の衆院法務委員会でのやりとり 2

階議員の質疑と、それへの政府側答弁のザックリメモです。

◆林刑事局長の答弁は、井出議員への答弁に引き続いて
スキスキのこの法案の隙間が、「わたしども」の解釈で
さらに微に入り細に入り、埋め尽くされていく工程を見ているようです。

林刑事局長の「組織的犯罪集団」の解釈によれば
・オウム真理教のあのサリン事件は、この改正案第6条の二 
の適用対象じゃなくなると思うのですが。

しかし、いったん「組織的犯罪集団」と捜査当局に認定されれば、
「計画」をした、その「心づもり」にとても重点が置かれることがわかります。

◆なにより、それ以前にまずTOC条約と合ってない!…ということもあぶり出されています。

・「汚職」に当たる罪が、すっぽり除外されていることも、TOC条約との齟齬だし。

 

林刑事局長が、終盤で「公用文書の毀棄の罪」などが277の罪からなぜ除外されたかに触れている部分では、すごく早口になります。
そのために、ここはよく聞き取れず、何度も聴き直しました。

それにしても、TOC条約との齟齬はひどい。
条約なんて、ほんとは視野の端にも入ってないのだろうと思いました。
TOC条約を墨守とは逆の、不真面目なこと極まりない態度、ではないかしら。

 

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衆院採決後、ビジネスロイヤーの会から、共謀罪法案に反対する声明文が提出された。
https://blogs.yahoo.co.jp/gyolawyer/14894952.html?__ysp=44OT44K444ON44K544Ot44Kk44Ok44O844Gu5Lya
一般のビジネスに従事する者、会社員や自営業者にも適用される…という見解とそれに対する危惧を表明。
別表3に掲げる罪の実行を目的にも有しているような場合、こうした一般の団体、あるいは団体の中に
プロジェクトチームのような組織を立ち上げた場合に、これらが組織的犯罪集団に当たりうるのではないか?

金田
一般的には、正当な事業活動を行っている一般の会社などは、通常は(定義)・・とは認められず、組織的犯罪集団には該当しない。


「通常は…」と言われ、さらに前段(読んだ定義)では、別表3に掲げる罪を目的とすれば該当すると仰っている。
TOC条約第五条1a(ⅰ)冒頭に、 「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接的に関連する目的のため重大な犯罪を行うこと」とありますから、企業のようなビジネスで利益を得る団体は、対象に当たりうると考えるのが自然。もう一度、組織的犯罪集団に、企業のようなビジネスで利益を得ることを目的とする団体が当たりうるということを確認したい。

金田
通常は・・・(定義繰り返す)とは認められないので該当しない。


例えば、節税対策を検討するプロジェクトチームがあるとする。
プロジェクトチームが節税対策を計画し、助言を顧問税理士に求めたところ、「脱税の罪に当たる」と顧問整理士から指摘され、
その段階で計画を断念した、という場合。
助言を求めた時点で「実行準備行為」が認められ、その段階で共謀罪が成立、その後計画は断念しても、いったんすれば「共謀罪」に当たるので、罪は免れないと思うが、いかが。

金田
(定義繰り返し)。
細目に渡るご質問ですので、補足を政府参考人から答弁を合わせて申し上げる。


そのプロジェクトチームのような組織自体が、組織的犯罪集団と認められるためには、その組織自身が、組織的犯罪処罰法上の団体に該当する必要がある。この場合は認められず該当しない。


組織的犯罪集団とは、団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるもの、となっている。後付けで脱税の罪を目的としていた、ということに認定されないか。それはないと法文上断言できるか。


犯罪主体の問題で、該当しない。それで、テロ等準備罪が成立の余地はないと考えている。会社の中にある組織としてのプロジェクトチームの例示があったが、この場合そのプロジェクトチーム自体が会社から独立した団体と認められる必要がある。

節税か脱税かという行為のレベルでの評価が、テロ等準備罪の主体であるところの、組織的犯罪集団の認定に影響を与えることはない。まず、組織的犯罪集団といえるかという主体の問題があって、それが行った犯罪実行の計画が、このテロ等準備罪に当たるかどうか、という議論になると思う。


そうすると、仮に、本当は脱税をしてもかまわないと未必の故意があったとしても、節税を目的とするプロジェクト―ムだと言い張っていれば、これは組織的犯罪集団には絶対に当たらないと、こういうことでいいか。


大前提として、節税対策のプロジェクトチームが組織的犯罪集団には該当しないと考えている。それは独立の団体性を有しないからだ。したがって、そのことだけでテロ等準備罪の成立の余地はないと考えている。
犯罪実行を目的としていると認定するためには、犯罪実行の認識が無ければならない。節税のためという認識であれば、それは組織的犯罪集団の共同の目的として認められない。


では、プロジェクトチームではなく、中小企業ということにして、会社全体で節税を考えているが、脱税について未必の故意がある場合、未必の故意があれば故意犯が成立するというのは確立した理論だが、この場合でも絶対に(組織的犯罪集団の共同の目的として)成立しないということでよろしいか。


その中小企業というのも、脱税を共同の目的として結合しているわけではない。正当な活動を目的としている企業については、犯罪行為を行うという目的が無くても、そういった団体の結合が構成しているということであるので、脱税を目的とした犯罪集団とはなりえない。


今回の法案は、5月19日に山尾委員の質疑で明らかになったが、TOC条約を締結することが目的であり、立法事実であるのに、「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接的に関連する目的」が企業などにある場合に、そういった企業などが脱税の計画をしたといったことが、摘発の対象にならないとなると、逆にTOC条約の第五条の条件を満たさない、ということにならないか。


今回のテロ等準備罪法案については、条約にある「組織的犯罪集団が関与するもの」というオプション、これを国内法に落として、その結果が組織的犯罪処罰法の改正案となっている。したがって、条約に基づいて、それで国内法を構成している。


意味が分からない。答えになっていない。条約にもとづいて、と言うのであれば、最初に「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接的に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを1又は2以上の者と合意すること」とあり、企業には金銭的利益を得ることに目的があり、その上で重大な犯罪の中に脱税も入る、その上で計画したものが、なぜ対象に入らないのか?TOC条約に入ることが目的ならば、当然先ほどのケースは対象になるのではないか?


林:
一般の団体を我々は「組織的犯罪集団」とは考えていない。条約においては、「組織的犯罪集団が関与するもの」こういったものをオプションとして使ってよいとなった。したがって組織的犯罪集団の関与というものを国内法の中で落とした。その際に、当然一般の団体は「組織的犯罪集団」ではないという前提で、それが法律の中で正しく落とされているとすれば、まったく条約に齟齬しているものとは考えていない。

階:
つまり、「組織的犯罪集団」に当たるかどうかが大前提で、これに当たらなければ、仮に金銭的利益その他の物質的利益を得る目的を有する団体であっても、共謀罪は成立しないし、逆に金銭的利益その他の物質的利益を得ることの目的がなかったとしても、みなさんが言うところの「組織的犯罪集団」に当たれば、これは共謀罪が成立するということになるのか?
TOC条約の第五条の目的に「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接的に関連する目的」と書いてあるが、これは共謀罪の成立には全く影響を及ぼさない、こういう理解でよろしいか?


仮に団体が、金銭的目的な犯罪を計画した場合、例えばこの場合に通常の会社がある段階で脱税を計画したと、こういったものについては今回、テロ等準備罪からは対象外とする、まずそれが前提だ。なぜならそういった団体は「組織的犯罪集団」ではないからだ。
条約の中でも、あらゆる団体が金銭的な利益を目的として計画したもの、その合意を処罰する、これを条約は求めていない。「組織的犯罪集団」が関与するというオプションを付けて良い、ということになっているので「組織的犯罪集団」の定義を置いて、国内法においては提出させていただいている法案とした。


「組織的犯罪集団」が関与するかどうかに重きを置いており、利益というところには重きを置いていないということでよいか。そうであれば、今回277の罪に絞り込む過程で、公用文書等毀棄の罪(刑法258条)が落とされている。今ちょうど、森友学園の問題で、財務省は公文書を廃棄したのではないか、これは違法ではないかと有識者からも指摘されている。「公用文書毀棄罪」は、7年以下の懲役なので、重大な犯罪に形式的に該当する。
かつこれは、金銭的利益とは関係ないが、今の説明だと、組織的犯罪に当たればいいということなので、仮に違法な公文書毀棄であれば、組織的にこれを財務省がやっていることになりうる。であれば、なぜ「公用文書等毀棄の罪」を排除したのか?


今回、対象犯罪の絞り込みにあたっては「組織的犯罪集団」というものが法文で明記されたことに伴い、その対象犯罪は「組織的犯罪集団」が現実的に計画することが想定される罪、という形で絞り込めば条約を履行することになると、こうした解釈をしている。その観点から「公用文書等毀棄の罪」等については、行為の態様、現実の犯罪情勢等に照らして、「組織的犯罪集団」がこれらの罪の実行を計画をすることが現実的に想定しがたいと考え、対象外とした。


まったくよくわからない。「組織的犯罪集団」には一般的企業は当たらないと言われたが、このビジネスロイヤーの会の意見書にもある通り、明文上の確たる根拠がない、ということだ。説明はされているが、捜査機関の一存でいかようにも運用できるということにならないか。
このビジネスロイヤーの会の声明は、まったくの杞憂、まったくの誤りということか?


そのような会社自体が脱税をした場合にも、従来の組織的犯罪の共謀罪に当たるのではないか、という懸念があった。こうした従来の懸念と、お示しの声明とは、基本的に同じだと思う。わたしどもは、この団体というものについては、従来は「団体の活動として」という解釈で制限しようと考えていたが、それに対する杞憂、不安が示されたので、今回は団体というものをさらに限定して、「組織的犯罪集団」に限るということに限定した。その際に「組織的犯罪集団」の定義として「結合関係の基礎としての共同の目的が犯罪の実行にある」というところを明記した。
これによって、一般の会社の団体が「組織的犯罪集団」となることは考えられない、と私たちは思っている

階:
「思っている」ではない。条文上明確にならなければ、萎縮的効果が生じる。しかもこの「組織的犯罪集団」の構成員だけではなく、昨日の参議院での答弁によれば、その周辺にいる人も共謀罪の主体になりうる、という話もあった。ビジネスロイヤーの会も指摘している通り、相談を受けた税理士は弁護士、こうした方々も、もし間違って本来は脱税の罪に当たるものを、当たらない、と言ってしまい、その意見にもとづき税務申告書のドラフトを作ってしまった場合にも、テロ等準備罪、共謀罪が成立するのではないか。こういう懸念も抱いている。専門家にとっても萎縮的効果が生じるのではないかと、論理的に説明している。これは全くの杞憂であって、法解釈の誤りであると断言できるか?

林:
例えば脱税の目的が無ければその会社は結合しない、解散する、ということなら脱税の目的が「共同の目的」になると思うが。正当な活動をしている団体が、犯罪の目的が結合関係の基礎になる目的であるというためには、そこまでを立証しなければ言えないと考える。一般の団体が脱税をすることが組織の目的になることはありうると思うが、ありうるからといって、脱税を計画していること、あるいは仮に何回か繰り返しているからと言って、その団体の目的が脱税にある、あるいは犯罪実行にあるということにはならないと申し上げる。

階:
条文の根拠を聞いている。条文上はどこからそう読めるのか、ということが問題。条文上の根拠はあくまで「結合関係の基礎」というところにあるわけだが、ここが極めて解釈の幅が広い概念ではないかと思っている。その点でビジネスロイヤーの会の意見も杞憂ではないと思っている。もし、ここは杞憂ではないというなら、きちんと文書で法律上の根拠を示して説明していただきたい。委員長にその点を理事会で計っていただきたい。

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・・・ここで疑問が、
この法案の条文では、共謀罪の主体は「団体」と規定されているのでしょうか…?
    (H.Y)